『役者評判記の世界展』

展 示 目 録


 ≪第一部 「役者評判記」とは何か≫

 役者評判記は、17世紀半ば以降江戸時代を通じて出版され続けた、歌舞伎役者の芸評書である。演劇芸能を観てその評判を書くスタイルで、このように即時的にしかも定期的に、200年以上にわたって刊行され続けた例は、世界的にも珍しい。
 初期の評判記は、当時歌舞伎の花であり男色の対象でもあった若女形・若衆形の容色評を中心としており、野郎評判記と呼ばれる。やがて、歌舞伎の成熟、演技術の深まりとともに舞台での技芸が評判の中心となり、文字通りの役者評判記が成立する。そして、技芸の評価の基準を考える視点から「位付」が生み出され、京八文字屋八左衛門刊行の『役者口三味線』という定型に至る。役者評判記は、『役者○○○』という題名を持ち、十一月の顔見世評を翌正月に、二の替り(正月)評を三月に、という定期刊行物として、江戸時代の歌舞伎ファン必携の書となっていったのである。

 <書名>                        <所蔵機関>
  1 役者大鑑(元禄6年本)              個人蔵
  2 役者大鑑(元禄10年本)             園田学園女子大学図書館
  3 役者口三味線(複製)              園田学園女子大学近松研究所
  4 役者花双六                    石水博物館
  5 役者初相場                    日本大学総合学術情報センター
  6 役者三叶和                    石水博物館
  7 役者千両箱                    石水博物館
  8 役者紫郎鼠                    石水博物館
  9 役者三ツ叶                     石水博物館
  10 役者大極図                     石水博物館
  11 役者真功記                     石水博物館
  12 役者時習講                     石水博物館
  13 役者舞台粧                     石水博物館
  14 役者見物左衛門                  石水博物館
  15 役者年中行事A                   石水博物館
  15 役者年中行事B                   石水博物館
  16 役者勇兵揃                     園田学園女子大学近松研究所
  17 惣役者三十六歌仙勢               個人蔵
  18 新富座久松座役者評判記姿競        園田学園女子大学近松研究所
  19 古今役者大全                   阪急学園池田文庫
  20 玉の光                       阪急学園池田文庫
  21 劇場一観顕微鏡                 阪急学園池田文庫
  22 客者評判記                    個人蔵
  23 祇園祭桃燈蔵(パネル)             名古屋市蓬左文庫
  24 江戸名所 猿若町                個人蔵
  25 大江戸芝居年中行事              園田学園女子大学近松研究所


 ≪第二部 芝居見物の楽しみ方≫

 当時の人々は、どのように歌舞伎芝居を楽しんだのであろうか。役者評判記を含め、残されている出版物からその楽しみ方を探っていこう。
 歌舞伎の脚本は台帳と呼ばれる。狂言作者によって書かれるもので、そのせりふ、ト書きによって歌舞伎の内容を知ることができる。
 観客に向けては、新たな興行の際にまず役割番付が発行され、新作の題名や好きな役者が演じる役名によって期待を高める。そして、興行とともに作品の舞台面を描いた小冊子絵尽しも発行される。観客の観劇の手引きになると同時に、格好のお土産となる。作品の人気が高まると、見せ場となる場面は役者絵に描かれる。これもブロマイド代わりに流通することとなる。今回採り上げる寛政期の流光斎如圭は、まだ商業ベースには乗らないが、上方役者絵の祖と言われ、写実的で重厚な作風を残した逸材である。さらに、作品の内容や役者の芸は役者評判記に書き留められ、その評価を後世に残すこととなる。当時の人々は、歌舞伎を観るだけでなく、様々な出版文化に彩られながら楽しんだのである。

 「 舊礎花大樹」(寛政4年2月大坂角の芝居)
  26 「 舊礎花大樹」台帳               阪急学園池田文庫
  27 「 舊礎花大樹」役割番付            阪急学園池田文庫
  28 「 舊礎花大樹」絵尽し              阪急学園池田文庫
  29 「 舊礎花大樹」役者絵              園田学園女子大学近松研究所
  30 役者当振舞                    石水博物館

  「勝武革奴道成礎」(寛政5年1月大坂角の芝居)
  31 「勝武革奴道成礎」台帳             日本大学総合学術情報センター
  32 「勝武革奴道成礎」役割番付          阪急学園池田文庫
  33 「勝武革奴道成礎」絵尽し            個人蔵
  34 「勝武革奴道成礎」役者絵           個人蔵
  35 役者勧進角力                   石水博物館


 ≪流光斎如圭≫

 生年不詳、文化六、七年(1809,10)頃没か。多賀氏。
 上方で活躍した絵師。蔀関月の門人。作画期は安永六年(1777)から文化六年(1809)まで。役者絵本や芝居関係書の挿絵他を描き、寛政三年(1791)には上方で初めての錦絵摺り役者絵を生み出した。上方役者絵の祖と位置付けられる。     
 特に、役者を美化せず、容赦なく写実的に描く作風は、力強く迫力のある線や構図とともに独自の魅力をたたえ、役者の風貌から内面まで描き出している。まさに江戸絵とは異なる上方絵の特色を方向付けた作品群である。
 肉筆画も残しているほか、役者絵本としては天明四年(1784)の『旦生言語備』、寛政二年(1790)の『画本行潦』、同六年(1794)の『絵本花菖蒲』がある。一枚摺り役者絵は大判が1枚、その他はすべて細判である。落款のないものも含めて45種程度が確認推定されているだけで、今回展示している4枚は、その頂点となる寛政期の貴重な作品である。

  36 「花桐豊松 三蔦」役者絵            個人蔵
  37 画本行潦                      個人蔵
  38 「尾上芙雀の南方十次兵衛」役者絵     園田学園女子大学近松研究所
  39 「尾上鯉三郎の南方十次兵衛」役者絵   園田学園女子大学近松研究所

  ※役者評判記の翻刻出版の過程を紹介する。
  40 歌舞伎評判記集成 出版関係資料 園田学園女子大学近松研究所


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