経験から学びに変える[経験値教育]

教員インタビュー

#08

人間教育学部 児童教育学科大江 篤教授

子どもに伝えたい地域の旧跡、
キラカードにしました

よい先生とはどんな先生でしょう。子どもたちが、自分の周りの小さな世界からより広い世界に興味を向け始めたときに、地域のこと、昔のことを分かりやすく教えてくれる先生がいたら、その先生はきっと尊敬される先生になるでしょう。先生を目指す学生には、できたらそうなってほしい、地域や歴史に関心を持って、自ら調べ、伝えられる人になってほしいと大江篤教授は言います。フィールドワークもあるという大江教授の授業やゼミの活動について伺いました。
小学生向けに、尼崎市内の旧跡を巡るスタンプラリーを実施したそうですね。

はい。地元には、その地区で生まれ育った人でも詳しくは知らない旧跡があるものです。そんな旧跡や人に話したくなる伝説を調べて地区の子どもたちに知ってもらい、地元に愛着を持ってもらおうと企画しました。このときは、尼崎市の杭瀬(くいせ)地区を巡るスタンプラリーでした。

スタンプラリーの様子を具体的に教えてください。

8カ所のスポットを巡ってもらうため、子どもたちには巡る場所を描いた絵地図とスタンプ帳を渡しました。各スポットを訪れた子どもには、そのスポットにまつわる由来や伝説の書かれた写真付きキラカードを渡します。キラカードを8枚すべてそろえて裏向きに並べると、50~60年ほど前(1950~1968年ごろ)の地図が現れて、今の地図と見比べることができるというシカケです。

このキラカードや絵地図はゼミの学生たちが自分たちで調べて作りました。

キラカード

キラカードと裏にして並べた図

例えばキラカードの一つ「浄光寺」には本尊の観音様にまつわる話があります。この観音様、所在が分からなくなることが幾度となくあったそうです。というのも浄光寺は、南北朝の時代や織田信長の時代に戦火で建物が焼失しましたし、慶長年間(1596~1615年)には何度も洪水に遭っているのです。それでも必ず見つかりお寺に戻ってきたことから、不思議な観音様として有名になりました。

「白と黒のフナ」のキラカードは、杭瀬に伝わる伝説です。昔、村人が煮付けにしようとしたフナを神崎川に逃がしたことがありました。それからというもの、川で見つかる、片側が白く片側が黒いフナは、逃がしたフナの生まれ変わりだという伝説が生まれ、今に伝わっています。

学生たちはこうした話を集めるために、大学の外に出て、資料に当たったり、地元の人に話を伺ったりしてきました。

カード作り、楽しそうですね。大江教授の専門は民俗学と伺っていますが、現地に出向いていって資料に当たったり聞き取り調査をしたりするのは、まさに民俗学のフィールドワークの手法ですね。

はい。ただ、学生には「フィールドワークをやりましょう」とは、あまり言わないようにしています。フィールドワークというとつらいとか大変というイメージがありませんか?学生にとって楽しいのはカード作りであって、こちらが目的。目的は楽しい方がいいですよね。

楽しみながら作業していくなかで、フィールドワークのやり方や調べる力が身についていくのですね。そんな為になる作業なら先生を目指す学生でなくともやりたくなります。大江教授の授業は児童教育学科の学生向けだけですか。

いえ、他の学部の学生が受けられる授業もありますよ。「つながりプロジェクト 村の魅力発見!香美町小代(おじろ)の宝探し」という授業です。宿泊施設のある大学のサテライト・キャンパスが兵庫県豊岡市にあるのですが、ここを拠点に2泊3日のフィールドワークを行う授業があります。学部の制約はなく、毎年、いろいろな学部・学科の2年生が受講します。

授業の課題は、香美町小代という場所に行き、その地区の魅力を大学生の視点で再発見し、魅力を発信するプランを考えるというものです。香美町小代は「日本で最も美しい村」認定を受けた魅力的な地区で、昔ながらの棚田があったり、黒毛和牛「但馬牛」の産地であったりと、特徴のある地区ではあるのですが、過疎化は進んでいるのです。

学生さんは滞在中、どのようなことをするのですか。

人間教育学部 児童教育学科 大江 篤 教授

小代に暮らす方々の話を聞いたり、稲刈りを体験したり、ホームステイをさせてもらったりといったフィールドワーク的なことをします。これ、楽しそうでしょ。

その後、課題に取り組むのですが、こちらはちょっと重いかもしれません。でも学生はまじめです。温かく迎えてくれて親しくなった地元の方々のために、課題に真剣に向き合って、人を呼ぶアイデアを出してくれます。

園田学園女子大学の学生さんはやさしい人が多いのですね。小代のためになるアイデアを出そうとする真剣さは素晴らしいです。お話しを伺っていると、大江教授の授業には、調べる力や考える力が自然と身に付く工夫があるような気がします。楽しいキラカード作りのためならフィールドワークが苦にならなくなる。また、フィールドワークを通じて小代の人々と親しくなるので、自然とその人たちや地区の未来を真剣に考えるようになる。もちろん園田の学生さんたちの、子どもを思う気持ち、小代の人を思う気持ちがあるからこそなのでしょう。今日はすてきなお話をありがとうございました。
人間教育学部 児童教育学科大江 篤教授
「私は失われた日本人の原感覚を発掘し、地域の「絆」に活かすことに興味を持っています。研究のフィールドは、祭礼行事(神聖・楽しさ)と怪異・怪談(不思議・怖さ)です。いずれもコミュニティにとって大切なものです。皆さんも野(フィールド)に出て、ボランティア活動やまちづくりなど大学でしかできない「経験」を重ねててみませんか」