教員インタビュー
人間健康学部 食物栄養学科渡辺 敏郎教授
発酵で新しい食品を作っていく

食物栄養学科 渡辺 敏郎 教授
はい。例えばここ園田学園女子大学のキャンパスは春になると桜が美しいことで有名ですが、あるゼミ生はこの季節を逃すまいとせっせと桜の花びらを集めました。
ええ。桜の花びらには酵母がいるんですよ。その酵母を使ってパンを作るためです。
いえ、酵母を培養する装置があるので、集めた桜の花びらから採取した酵母をそこに入れれば酵母が育ちます。育った酵母を使ってパンを作りますから、桜がすべて散ってしまっても桜酵母のパンを焼き上げることができました。
桜の花びらが入っているわけではありませんから桜の香りはしません。ですが、明らかに普通のパンよりも芳醇な、香りの良いパンになりました。学生たちにはたいへん好評で、これは商品にできるのではないかと思っています。
「尼いも」はご存知ですか。名前が示すとおり地元、尼崎市が原産のサツマイモなのですが、1934年と1950年に台風被害に遭い、それ以降姿を消した幻の野菜です。この尼いもを復活させようという動きがあって、尼崎にある大学としては是非ともこの運動に参加することにしました。
尼いもをそのまま使った食品は、今の世の中に受け入れてもらうのが難しいのではないかと感じました。確かに甘みのあるサツマイモなのですが、今は徳島の鳴門金時をはじめおいしいサツマイモが次々と出てきています。本当においしいものを作らないと普及はしません。
食品加工の技術を使うことにしました。具体的には発酵を使った甘酒作りです。尼崎では毎年、「尼芋奉納祭」が行われますが、開催場所は貴布禰(きふね)神社です。神社といえば甘酒を振る舞うイメージがありますよね。そこで、地域との密着色をさらに出すために、貴布禰神社の境内からコウジカビを見つけ出して、これを蒸した尼いもに種付けして麹(こうじ)を育てます。出来た尼いも麹を使って甘酒を作るという作戦です。

尼いもの収穫風景
ゼミ生が総出で大小18個の尼いもを掘り出した
大学キャンパス内に畑を作りました。2016年6月に尼いもの苗12株を植え、同じ年の10月に収穫しました。学生にとっては初めて見る尼いもだそうで、このときはゼミ生が総出で畑に出て、大小18個の尼いも掘り出しました。貴布禰神社の境内でコウジカビを採取したり、尼いもを蒸してコウジカビの種付けをしたりといった一連の作業もすべてゼミ生が行いました。
このときに出来た甘酒は、残念ながら甘さの少ないものでした。ですが今年、2018年には甘酒作りの方法を変えて再挑戦しています。これは味がとてもよいので商品にできるのではないかと期待しています。
確かにそうかもしれません。食物栄養学科に来る学生さんに就職希望先を聞くと、これまでは病院の管理栄養士や学校の栄養教諭などが人気でしたが、最近は一般の食品企業で商品開発の仕事がしたいという学生さんが増えていますから。
ものづくりの経験は就活でも生きるようですよ。面接で「どのような卒論に取り組みましたか」と聞かれたときに、ものづくりの話をするとかなりアピールするみたいです。

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