プロジェクト概要

 近年、災害伝承の重要性は見直されている。それは岩手県釜石市の小中学生が、「津波はまず各々が逃げることが大切」という過去の津波からの教訓を「津波てんでんこ」という防災標語とし、その標語を基に防災訓練を行った結果、東日本大震災時に生存率99.8%という成果を挙げたことが一因と言える。また、東日本大震災復興構想会議は、「特に歴史上少ない被害については、時間の経過とともにその教訓は、忘却され、風化しやすい面もある。今後、同様の被害を起こさないために、地域・世代を超えて今回の教訓を共有化することが必要である。」と提言している。災害伝承を効果的に収集し防災に活かすことは、水害が多発する尼崎市の地域思考教育研究において取り組む重要課題であると言える。そこで、本研究では、過去の災害にまつわる災害伝承や被災経験の記憶を抽出したうえで、伝承を実用性から評価し、地域の自助・共助を促す防災教育プログラムを構築する。

平成27年度 活動報告

平成26年度 活動のようす

【はじめに】
 東日本大震災以降自然災害が頻発し、 防災システムの構築は必須であるといえます。片田(2011)は、行政による防災対策などが充実すると人々の災害に対する意識が減退することを指摘し、防災教育による社会対応力の強化が必要であると述べています。
 尼崎市は人口約45万人であり、平成24年の高齢化率は23.4%であり高齢化が進展しています。超高齢社会において、大学生は災害時避難誘導等活動できる資源です。矢守ら(2007)は、防災力を高めるには「人間力」「生活力」「市民力」の3つの力の養成が必要であると述べており、大学における防災教育はこれら3つの力を高めることをめざすことが必要です。
 

【目的】
 地域における防災活動の実際と課題および本学学生の防災意識の実態を把握し、地域と大学が連携した防災活動の試みを通じて、地域防災力を高めていくことを目的とします。さらに大学と地域が連携し地域防災力を高めるための教育プログラム・体制づくりを行います。
 


<平成25年度活動>
 尼崎市の地域特性の把握]既存の資料から市の概要を捉えたうえで、杭瀬・大庄地区のフィールドワークを行いました。行政・民間の防災の取り組みの把握:市および社会福祉協議会の取組みについて、関係者から情報を得ました。

【地域防災活動の把握】
 杭瀬小学校を中心とした地区防災の取組みおよび大庄地区の「防災カフェ」の取組みについて、関係者からヒアリングし、意見交換を行いました。また、市主催の「地域防災力向上講座」では3地区の活動に参加し、まち歩きと防災マップ作成といった地区防災教育の実際を体験しました。

 

<平成26年度活動>
 地域防災活動の把握と実践:杭瀬地区杭瀬小学校区運営会議に出席し、地区活動運営について把握・参画しています。杭瀬EASTサマーフェスティバルに参加し、健康相談を実施しました(約30人)。また、夏休みの親子を対象に「防災マップづくり」を行いました(参加者10人)。大庄地区:自主防災会リーダーを対象に防災活動の現状・課題についてヒアリングを行いました。また、大庄おもしろ広場運営会議に出席し、まちづくりの状況を参加観察しました。今後防災カフェにおいて、防災に関する講話を行う予定です。園田地区:避難訓練実行委員会に企画の段階から参加し、当日は学生とともに避難訓練スタッフとして活動を行う予定です。













【今後の方向性】
 地域活動の分析結果から本学の防災活動・災害時支援活動のあり方を検討します。他大学の防災活動・教育についてベンチマーキングを実施します。本学学生・教職員の防災意識を把握し、防災教育プログラムの提案を行います。